限定承認
限定承認とは,相続した財産の範囲内で被相続人の債務を弁済し,余りがあれば,相続できるという制度です。
つまり,限定承認をした相続人は,債務について責任を負担するとしても,その範囲は相続によって得た財産の範囲に限定されるのです。そのため,相続放棄は,相続財産の状況が明確ではなく,債務超過かどうか明らかでないという場合,相続人にとっては最も安全な制度であるといえます。
しかし,限定承認は,主に以下の理由から,あまり利用されておりません。
1 手続的負担が大きいこと
相続人が限定承認をするためには,原則として,被相続人が死亡して相続が開始したことを知った時から3か月以内(この期間を『熟慮期間』といいます。)に,財産目録を作成して家庭裁判所に提出し,限定承認をする旨申述しなければなりません。そして,限定承認後5日以内に,相続債権者・受遺者に対して,限定承認をしたこと,2か月を下らない一定の期間内に請求の申出をするように公告するといった手続等をし,その期間満了後,申し出た相続債権者その他知れている相続債権者に,法律で定められた順序に従い,相続財産から弁済をしなければならないのです。このように限定承認をする場合,相続人には,大きな手続的負担が生じてきます。
2 相続人全員の協力が必要であること
また,相続人が数人ある場合,限定承認は,相続人全員が共同して行わなければなりません(民法923条)。そのため,限定承認は,一人でも反対者がいれば限定承認の余地がなくなってしまうという難点があります。